はじめから
前回から
「これ…京浜東北? 電車の形してるんですね。かわいい」
女は攻め方を変えてきた。
それまで無表情だったのに、うっすら笑みを浮かべている。
しかしライターのことなど話題にされても返事をする余裕は未だない。
「彼女からのプレゼントだったりして」
なぜそれを知っている!
得体の知れないものには触れないようにしてきた。
出方を悟られないように、自分からも動かないようにしてきた。
だが、この女は全てお見通しらしい。
「あ、図星でした? 私そういうカン、すごくいいんですよ。
気味悪く思わないでくださいね?」
遅い! この状況で「気味悪く思うな」なんて無理だ!
「と言っても無理ですよね。
私が何者か、すぐに言えればいいんですが順序が必要なんです。
急に説明を始めるのはあなたにとってあまり良くないことなので」
もう、本当に無理。ぼくの思考にどこまでも食らいついてくる。
心を読めるならそう言ってくれればいいのに。
「…独り言みたいになっちゃいますけど、始めますね」
呆れたように言う彼女を尻目に、ぼくは逃げるように店を出た。
いや、実際に逃げた。
狼狽しながらもテーブルの下で用意していたコーヒー代をテーブルに叩き付けて。
続
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